アルゼンチン、中南米と日本
プロフィール
アルベルト 松本のプロフィール.
スペイン語の翻訳&通訳サービス等について 「会社案内&事業内容」
記事
アルベルト松本の著書
アルベルト松本の記事やエッセー
スペイン語情報誌「MUSASHI」
日系人関係
アルゼンチン、中南米と日本
スペイン語通訳プラザ
イベント&新刊書案内
会社案内&事業内容
合資会社イデア・ネットワークの会社案内
2015年5月現在、13回目の増刷になりました!24,000部になります。
  ありがとうございます!
リンク
 
 
 
民主主義は確立したが経済社会問題は未解決

松本 J. アルベルト(会報Argentina 第44号、2004年4月-(社)日本アルゼンチン協会)

昨年の12月でアルゼンチンは、1983年に誕生したアルフォンシン政権から20年目の民主主義期間を迎えた。政治的な困難も多々あったが、国民の投票によって政権は交代し史上民主政治が最も継続した期間である。

1912年、国民に投票権を与えたサエンペーニャ法は、すべての国民の政治参加を可能にするが1930年のクーデター以来軍事政権が数年毎に起き不安定な政治体制が続いた。

20年間の民主主義は大きな功績を残しているが、以前からの経済社会問題はあまり解決しておらず逆に所得格差の拡大などで悪化しているとも言える。一人当たりの所得という観点からは、1983年3.544ドルだったのが2003年には3.439ドルに後退しており、貧困層の人口割合は83年に16%だったのが、今は51%までに拡大してしまっている。他の南米諸国も同じような時期に民主主義を回復しているが、現状は所得格差の著しい拡大である。スペイン語圏でスペインだけが、78年の新憲法の下そしてその後のEU加盟を果たすことによって、民主主義という政治体制と経済制度を両立することに成功し、20数年間で所得を5倍(年間所得2万ドル)にし、貧困層は15%から3%までに改善することができた。

スペインと比較することは地理的歴史的な違いがあるため無理があるが、政治的な選択をするには、かなり参考になる部分もある。それは、市場統合への選択(メルコスールだけでは、経済を活性化するには足らず、やはりアルゼンチンよりもっと購買力のある市場を見る必要がある。それは、アメリカをはじめ、ヨーロッパや今後中国等である)という観点と国内の経済発展モデルに対しての政治的コンセンサス構築についてである。

アルゼンチンの場合、中道左派のアルフォンシンも中道右派のメネムにも共通したことがある:大きな改革を行うための政治的な”コンセンサス”があったにもかかわらず、数少ないタイミングを逃し財政運営に対する規律を軽視し続けたことで対外債務に依存したことである。

今までどの政権もある程度合理的で筋の通った政策提言はしてきたが、著名な歴史学者ルイス・ロメロ氏は、”国の機能が低下(行政制度の低落現象)しているため、いかなる政策も実現しない、したとしても中途半端又は逆効果になってしまっていることもある。この低迷は70年代から悪化しており、今は政策を実施することも、実施後のチェック機能も非常に衰えており、腐敗と不正が充満してしまっているのである。民主主義のための制度構築ではなく、その時々の(軍政も含む)政権、時にはカリスマ性の強い指導者のための制度であったため、国民のための正常な及び公正な行政ではなくなってしまったのである。国の機関はイデオロギーというより与党の欲望や利害関係の取引材料になってしまい、あまりにも政党や政治指導者の政治活動と繋がってしまっているのだ”と厳しい指摘を行っている。

同氏の分析を引用すると確かに今のアルゼンチンでは、時代やニーズに対応でき、かつ信頼できる制度構築が急務であり、単発的な汚職追放や不正の取り締まり強化だけでは根本的な問題を解決できる状態ではない。

現政権は、こうしたことも視野に入れて大改革をしようとしているのか、それとも限られた政治力しかないため権力を集中するため多少強引とも見える手法で政権を固めようとしているのかまだ把握することができない。政治及び行政改革には、いかなる国でも政治的コンセンサスと実行力(権力)が必要であるため、その過程にいるのではないかとキルチネル政権への期待も高い。もし、今回の制度的危機をチャンスとして捉え、国民の痛みを新しいアルゼンチンのために活かすことができれば、ここ数年の苦難は報われ、将来への希望も見えてくる。そして何より大事なのが民主主義という政治体制が経済的にも国民を豊かにするということである。 (C)JAM

 
 
 
アルゼンチン、中南米と日本の関係の目次ヘ
アルゼンチン、中南米と日本のトップページへ
トップペ−ジヘ